第十ニ話『議会と炎』
王宮の中央議事堂は、民と貴族、そして議員達の熱気に包まれていた。
「ネギの宝石」を王妃に投与するべきか否か。国の未来を左右する重大な決定に、国中の注目が集まっていた。
レイ『皆様。これまでの研究により、“ネギの宝石”には未知の治癒能力がある可能性が示されております。王妃様の命を救えるかもしれない唯一の希望です。』
反対派議員『だが!それはまだ確証が無い!もし副作用が出たらどうする!?王妃様のお身体は、王国そのものだぞ!?』
リョウヘイは壇上から民の方を見た。キムチ革命を支えた仲間たちが、後ろからその背中を見つめている。
リョウヘイ『民よ!聞いてくれ!ヒカル兄さんは命を賭けてネギの力を探し続けた!その結果が今、ここにある!……だが、民意を無視して強行することはできない。僕は、この国がもう一度家族のように一つになってほしいんだ!』
その言葉に、民の中から拍手が広がり始める。
『王妃様を救ってほしい!』
『希望を見たい!』
『兄弟で争うなんて、悲しいじゃないか!』
民意は次第に“投与を望む”方向へ傾いていった。
だが――その夜、事態は一変する。
王宮地下・宝物庫――
警備を掻い潜り、黒装束の影がひとつ。
厳重に保管されていた“ネギの宝石”が、その手によって奪われた。
翌朝。
チョビ『な、なんとぉぉ!?ネギの宝石が……消えたですとぉぉ!?』
ヒカル『……そんな……!もう、あとがないというのに……』
レイ『これは内部の者の仕業です。おそらく、宝石の力を恐れ、王妃の目覚めを望まない者の……』
ヒカルの拳が静かに震えていた。
ヒカル『……いいでしょう。もう、黙ってはいられない。』
リョウヘイ『兄さん……?』
ヒカルはゆっくりと弟の方を見た。その瞳には、かつての優しさと、そして決意と怒りが宿っていた。
ヒカル『僕は、自分の手で宝石を取り戻す。……たとえ、王国の中に敵がいるとしても。』
リョウヘイ『僕も行く。兄さん、僕は……もう衝突するのは嫌なんだ。力を合わせよう、母上のために。』
ヒカル『……ありがとう。リョウヘイ。』
その瞬間、王国の命運を背負った兄弟が、再び肩を並べる決意を交わした。
だが、闇はさらに深く広がりつつあった。
ネギの宝石を手にした者――その名は「カンジャン・キム」
かつてキムチ界隈を追放された男であり、発酵の“闇”に手を染めた者だった――