王国の空は、深く蒼く澄み渡っていた。
フープ王国ではついに、次代の王を決定する戴冠の儀式が執り行われることとなった。
王宮前の広場には、国民が集い、老若男女が緊張と期待を胸に息を呑んでいた。
二人の王子、ヒカルとリョウヘイ。そのどちらがこの国を導く王となるのか。
この一年、二人は異なる道を歩んできた。
だが今、その道はひとつに交わり、選択のときを迎えた。
広場中央、玉座の前。
レイ大臣が静かに前に立つ。
レイ『本日をもって、フープ王国の次代国王を定める戴冠の儀を執り行います。候補は、第一王子ヒカル殿下。そして、第二王子リョウヘイ殿下。』
チョビ『いよいよですな……』
フジ『ど、どちらが選ばれても……ぼ、僕は応援しますっ……!』
カグラ『どっちが王様でもええ。ただ飯が美味い国であってくれたらそれでええ。』
民衆の間でも意見は分かれていた。
『ネギの研究で国を救ったヒカル様こそ王にふさわしい!』
『いや、キムチの力で国民に笑顔を戻したリョウヘイ様が真の王だ!』
『両方王になればええのにのう……』
しかし、玉座はひとつ。王位はただ一人にしか与えられない。
そして、壇上へと二人の王子が並び立った。
ヒカル『……僕は、旅に出てわかったんだ。この国の自然と農、そして命がどれほど尊いものか。ネギはただの野菜じゃない。人を繋ぎ、救う力がある。僕はその力で、この国を守っていきたい。』
リョウヘイ『僕は、民の声を聞いた。この国の食卓に笑顔が戻ったのは、発酵という知恵があったからだ。キムチがもたらしたのは、健康だけじゃない。未来を恐れずに立ち向かう勇気だった。』
二人は互いに視線を交わす。
ヒカル『……お前がいてくれたから、俺は旅を続けられた。』
リョウヘイ『……兄さんが戦っていたから、僕は城を守れた。』
レイ『……どちらが王にふさわしいか、もはや甲乙つけがたい。よって、私は提案します。』
一瞬、空気が張り詰める。
レイ『王はひとつ、だがその手はふたつある。――王座はヒカル殿下に。政務と指導はリョウヘイ殿下に。』
民衆『おおおおおお……!?』
チョビ『両輪で国を支える、ということですな……なるほど……!』
フジ『そ、それってつまり……王と宰相、ですか……!?』
レイ『まさに、そうです。この国にはどちらの知恵も、どちらの力も必要なのです。』
ヒカルとリョウヘイはしばし沈黙したのち、互いに小さくうなずいた。
ヒカル『じゃあ、俺は……この王冠を、民のために戴く。』
リョウヘイ『そして俺は、民と共に歩む。兄さんを支える、もうひとつの柱として。』
玉座の前に用意された王冠が、レイの手によってヒカルの頭に乗せられる。
レイ『――これより、フープ王国第十六代国王、ヒカル陛下の即位をここに宣言いたします!!』
民衆『うおおおおおおお!!!』『万歳!!ヒカル王万歳!!』『リョウヘイ宰相万歳!!』
王宮前の空は割れるような歓声に包まれた。
こうして――
ネギの知恵と、キムチの力を持つ二人の王子が、フープ王国の新時代を築きはじめたのであった。
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次回『王の食卓』
新王の初仕事は、“王の食卓”を整えること。
だが、初めての国政の裏では、新たな陰謀の影も忍び寄っていた――