北の洞窟

北の悪魔『くくく、、ついに手に入れたぞ、、』

北の悪魔が手にしているのは小瓶の中に蠢く黒い靄のような物体。小瓶をうっとりと眺める様子は長年待ち焦がれた恋人に対してのそれだ。

北の悪魔『おい、人間。恐ろしいか?大丈夫。今すぐ君たちを解放してあげよう。君たちは街に戻りいつものように平和に暮らしたらいいよ。』

ボロボロの姿で縄で縛りつけられた数名の人間達は絶望感に打ちひしがれた表情から、安堵し涙を流していた。

『そ、そんなぁ!』

『あぁ、、本当に帰れるんだ、、』

『本当に助けてくれるんですよね?』

北の悪魔『ほら、馬車も用意してあげたから早く国に帰ってあげなよ。』

ニヤニヤしながら北の悪魔は手に持った小瓶の蓋を開け人間に振りかける。

『うわっ!』

人間達は咄嗟の事に驚いたが、恐怖からか一目散に逃げ出していく。北の洞窟に悪魔の高笑いが響き続けるなか人間達はただただ恐ろしい思いから逃げ出したかった。

そして、三日三晩馬車で走り続ける人間達は命からがら街に辿り着いたのであった。

『ゴホゴホ、、助かった、、』

兵士『おい!大丈夫か!?』

兵士『直ぐに国王軍の療養施設に案内しろ!』

疲労困憊で力尽きた人々を複数の兵士が担ぎ支えながら王宮内の療養施設に連れていく。

『ありがとう!ゴホゴホ、、本当にありがとう!』

兵士『もう大丈夫だ!何も心配しなくていい!ちゃんと休んで家に帰れる!』

さらに3日後

兵士『ゴホゴホ、、なんだか今日は調子悪いけど、とりあえず仕事行ってくるよ!』

兵士の妻『そうね、でもあまり無理しないで早く帰ってきてね。ゴホゴホ、、』

平和な王国に少しずつ不安が蔓延してきていることをまだ人々は気づかずに過ごしている。

しかし、その不安は確実に王国を蝕んでいくのであった。