王宮の大広間には、長い旅路を終えて帰還したヒカル王子の姿と、王国の再建を成し遂げたリョウヘイ第二王子の姿があった。

臣下や民衆たちの視線が二人の王子に注がれている。祝福と称賛、そしてわずかなざわめきが広間を満たしていた。

レイ『これより、第一王子ヒカル殿の帰還を正式に迎えると共に、その成果と今後の進路について御前会議を開きます。』

リョウヘイ『兄さん…本当に、おかえり。』

ヒカル『ああ、ただいま。リョウヘイ…君の活躍、聞いていたよ。国をここまで立て直してくれたのは、君の力だ。ありがとう。』

リョウヘイ『……ありがとう。でも、僕は王国のためにやっただけだよ。』

ヒカルの表情に一瞬、影が差す。

チョビ『いやいやいや〜!ヒカル坊っちゃんが無事で良かったですよほんとに!このネギの宝石とやらも、よう見つけてこられましたなぁ!』

フジ『この宝石からはごく微量ながら未知の有機硫黄化合物が検出されました。試験では昏睡状態のラットが意識を取り戻す兆候もありました!王妃様の回復に期待がもてます!』

広間にどよめきが起こる。

リョウヘイ『…でも、それは確実なの?まだ研究段階なのに、過度な期待を国民に与えるべきではないと思う。』

ヒカル『僕は希望を与えたいんだ、リョウヘイ。母上を、そして父上を…もう一度――』

リョウヘイ『兄さん…それはただの夢想だよ!この一年、僕は現実と向き合って国を動かしてきたんだ。幻想を追う余裕なんて、今の国にはない!』

その言葉に空気が一変する。

レイ『……二人とも、落ち着いてくださいませ。』

だが、二人の間には幼き頃にはなかった隔たりが生まれていた。

フジ『王子たち……』

ヒカル『リョウヘイ。君のやってきたことを否定するつもりはない。でも、僕はこのネギの宝石に、かつての王国が持っていた“奇跡”の力を感じたんだ。母上の命を前にして、現実だけで語れるものか!』

リョウヘイ『現実と向き合う覚悟のない者に、王の資格はない!』

その瞬間、二人の間に稲妻のような空気が走った。

カグラ『こりゃ…まずい雰囲気になってきましたな…。』

レイ『……今は、冷静さを取り戻しましょう。明日、王妃様への「宝石の使用」を巡って、会議を改めて開くといたしましょう。』

リョウヘイ『わかりました。』

ヒカル『…ああ、了解したよ。』

二人の王子は言葉を交わすことなく、広間を後にした。

それぞれの胸に秘めた願いと、譲れぬ正義。

王国の未来を担う二人の若き王子が、やがて正面から衝突することになるとは――このとき、誰が予見できただろうか。